転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜
215 あのねぇ、うちのお父さんはとっても頭がいいんだよ
次の日の朝、僕はいつも魔道具を作るお部屋で、作業する準備をしていた。
入ってるお水がずっときれいなまんまの水がめ。
今回はそんな魔道具を作る事になったんだけど、それにどうしても必要なのが呪文の魔道文字記号なんだよね。
「取り合えず、ご本から1文字ずつ探さないといけないなぁ」
前世の文字を使った一覧表ができてたら楽だったけど、まだそんなもんが無いから僕はバーリマンさんから受け取った文字記号が書いてある方の教科書を開いて、全部の文字を探してく事にしたんだ。
今回の魔道具に使う魔法は光のお掃除魔法ビュリファイ。
文字数が多いからちょっと大変だったけど、一番最初のページから順番に探して行ったら1時間ほどで全部の文字記号を見つけることができたんだよね。
「ちょっと時間が掛かっちゃった。けどこれで間違いないはずだから、後は魔法陣を書けばいいだけだね」
僕はまだ魔法陣を自分で構築する事はできないけど、今回はこないだロルフさんたちに貰った魔法陣の真ん中に書かれてる魔道文字記号をビュリファイに書き換えるだけだから大丈夫、
と言う訳で、僕は貰った魔法陣の一枚を取り出したんだ。
使うのは範囲を指定して魔法をかける魔法陣で、真ん中にはクールって書かれてる方だ。
「この魔法陣でクーラーを作る前に、他のを作る事になるなんてびっくりだね」
この魔法陣と、あとちょっと小豆くらいの魔石があれば今いる部屋のクーラー位なら簡単にできちゃうから、暇な時にでも作っちゃおうと思ってたんだよね。
でもそんなのを作るより、お水がずっときれいなまんまの水がめの方がみんな嬉しいだろうから、先にこっちを作んなきゃいけないんだ。
と言う訳で僕は羊皮紙とペン、それにインクを取り出してその魔法陣を書き写して行く。
これはこの間習った放出の魔法陣に比べたらちょっと難しいんだけど今回は見本が目の前にあるし、何より魔法陣の書き方の基礎は教えてもらってたおかげで僕は何とか書き上げる事ができたんだ。
「これでよしっと。後は……」
でね、最後にクールって見本に書かれてる場所をビュリファイって魔道文字記号に変えて書き込んでこの魔法陣は完成した。
ここまで来れば後は簡単。この魔法陣を魔石に刻めばいいだけなんだよね。
この魔法陣は一度にMP5使うだけで発動するから魔道リキッドを使うつもりならジャイアントラッドくらいの魔石でも大丈夫だけど、今回は一度魔石に魔力を込めたらしばらくそのまま使えるようにしたいからって、僕はこの間いっぱい狩ったクラウンコッコの魔石を机から取り出したんだ。
これならブラックボアとおんなじくらいの大きさだし、満タンまで魔力を注いでおけばもしかしたら一月くらいそのまま使えるかも知れないね。
でね、このままクラウンコッコの魔石に魔法陣を刻んじゃってもよかったんだけど、僕はその魔石を鑑定解析で調べながら光の魔力を注いで白く輝く光の魔石に作り変えたんだ。
だってビュリファイは光魔法だし、こうしとけば普通の魔石を使うよりもっとお水がきれいになるかもしれないからね。
そして最後に、僕はその光の魔石にさっき作ったビュリファイの魔法陣を刻み込む。
まぁこの作業自体はジャンプの魔法陣を刻んだりして何度もやってるからあっさりと成功したんだけど、今回は書いた魔法陣がちゃんと発動するかどうかわかんないから、魔道具を作る前に一度発動させて見ることにしたんだ。
「あれ?」
魔石に魔力を注いで起動させてみたんだけど、そしたらちょっと困った事が解ったんだよね。
「これ、きれいにする範囲がちょっと広すぎだよね」
そう、発動したビュリファイの光が包んでる範囲がとっても大きかったんだ。
その大きさは大体おっきな冷蔵庫の中を全部いっぺんに洗えちゃうくらいなんだけど、でも確かこの魔法陣で指定できる範囲ってもっと狭かったはずだよね?
だってこの魔法陣はクーラーを作るのに使うための物なのに、こんなに広い範囲を冷やしちゃったらとっても大きな箱を作んないといけなくなっちゃうもん。
だから、この魔法陣でクールを発動押させてもこの半分くらいの範囲しか冷えないはずなんだよね。
「これって光の魔石を使ったからなのかなぁ? あっ、もしかしてクールとビュリファイでは魔法の力が違うから、同じ魔法陣でも範囲が変わっちゃったのかも」
光の魔石のせいかも知れないけど、それにしても効果範囲がこんなに広くなるのはちょっと変だよね? そう考えると魔法が違うからって方があってる気がするんだ。
でもそうなると、魔法陣自体を書き換えないと範囲を狭くする事ができないって事になる。
「どうしよう? これでも大丈夫かなぁ?」
これを使っても作った大きな水がめよりも広い範囲にビュリファイの効果が出るだけだから特に問題無いもかも知んない。
でもなぁ、朝はいいよ、まだ明るいから。
だけど夜はビュリファイが発動するたんびに水がめの周りがぺかぁ〜って光っちゃうんだよね。
「お母さんに聞いてみよ」
まぁぺかぁ〜って光るだけで、その範囲はお水と一緒にきれいになるからそのままでもいいかもしんないけど、でも黙ってそのまま作っちゃったら怒られちゃうかも知れないもん。
だから僕は、お母さんにこれでもいい? って聞きに行ったんだ。
そしたらそこにお父さんもいてびっくり。
「あれ? お父さん、お仕事に行ったんじゃないの?」
「いや、今日はルディーンが魔法の水がめを作るといっていただろう? 昨日の話では魔道リキッドを使わないと言う話だったが、もし作ってみたら思った以上に魔力とやらが必要だったら困ると思ってここで出来上がるのを待っていんだ」
お父さんが言うには、もし作ってみたら魔力がいっぱい必要で使う時に僕やキャリーナ姉ちゃんが大変だって事になってたら止めなきゃいけないって思ったんだって。
だから今日計りや畑のお仕事に行かずに、ここでお母さんと一緒に待ってたんだってさ。
でも丁度よかった。お父さんにも聞いてもらった方がいいもんね。
「魔道具を使っても、昨日の晩御飯の時にお話したのとおんなじでそんなに魔力を使わないからそれは大丈夫だよ」
「そうなの? よかったわ」
魔力の話を聞いて、ホッとした顔をするお母さん、
でも他に問題ができちゃったって言ったら、しんぱいそうな顔になっちゃったんだ。
「それで、なにがあったんだ?」
「あのねぇ、葉方を使う魔石を作ってみたら、僕が思ってたのよりずっと広い所がきれいになっちゃうことが解ったんだ」
だからお母さんの代わりにお父さんが何があったの? って聞いてきたから、僕はビュリファイの範囲が思ったより広い事を話したんだよね。
でもさ、そしたら今度はお父さんが不思議そうな顔をしたんだ。
「ルディーン。それは作るはずの水がめより小さくなったんじゃなく、大きくなったんだな?」
「うん。思ってたのより、ずっと広くなっちゃったんだ。だからね、作ろうって思ってた水がめの外まで魔法でぺかぁ〜って光っちゃうから、どうしようって思ってるんだよ」
夜にぺかぁ〜って光ったら困っちゃうよね? だから僕はそれでもいい? って聞いたんだけど、そしたらお父さんは呆れた顔をして言うんだ。
「どうしようも何も、魔法が広い範囲まで届くなら、それだけ水を入れるところを大きくすればいいだけだろ? どうせ多く水を入れたところで、その魔法があれば悪くなる事は無いんだから」
「え〜でも、お水がいっぱい入るって事は、川からいっぱいお水を汲んで来ないといけなくなるって事だよね? そしたらお父さんやお兄ちゃんたちが大変じゃないか」
水がめを大きくしたらその分いっぱいお水を入れないとダメだもん。
でもさ、確かにうちからは川が近いけど、それでもいっぱい運ばないといけなかったらとっても大変になっちゃうって僕、思ったんだよね。
だからそう言ったんだけど、お父さんは呆れた顔で、
「何を言ってるんだ、ルディーン。そんなの、大きな樽にでも入れて一度に持って来ればいいだけだろう?」
なんて言うんだもん。僕、びっくりしちゃった。
だって樽だよ? あんなのにお水をいっぱい入れたら、いっくらお父さんが力持ちでも川から持ち上げられるはず無いよね。
それに川の上んとこに樽を置いてみんなで桶を使って水を入れたとしても、それをお家まで運んで来るのは大変だし、その樽から水がめにお水を移すのも取っても大変だって僕、思うんだ。
だからね、僕はお父さんにそう言ったんだけど、そしたらあっさりと言われちゃったんだ。
「何を言ってるんだルディーン。そんなの、重さを軽減する魔道具を使うに決まってるだろ。いくら水が入った樽が重いと言っても、ブラウンボアよりは遥かに軽いから川から運ぶなんて楽勝だ」
そっか! 重さを軽くすれば簡単に運べるもんね。
「凄いや! 僕、全然気付かなかったよ」
「そうか、そんなに凄いか?」
「うん! お父さん、頭いい!」
こうしてお水がずっときれいなおっきな水がめの魔道具の問題は全部なくなったんだよね。
だから僕は、安心して魔道具本体に手を付けることが出来るようになったんだ。